プロフェッショナルカスタムマシン

プロの製作したカスタムマシンは、市販化されたパーツをただ取り付けるだけではない。取り付けたパーツの性能をフルに発揮できるようにセッティングしたり、細かいフィッティングにもこだわっていて、それがひいてはマシンとしての完成度の高さに結び付いているのだ。その実例をここでは紹介する。

カワサキ
Z1000MkⅡ by サンクチュアリー本店

オーナーの好みを最大限反映させつつ妥協しない作り込みを見せる

Z1000MkⅡ by サンクチュアリー本店

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バイクのカスタムとは千差万別であるが、個人カスタムにしてもショップカスタムにしても、共通するのは“オーナーにとっての理想の形を作り上げること”であることに違いはない。もちろん走行性能を損なうカスタムでは本末転倒なので、良心的なカスタムショップはそのような変更を許容しないことが多いが、安全性や性能に直結しない、たとえばカラーリングやパーツ形状などはオーナーの自由意思が尊重されることがほとんどだ。

カスタムシーン全体から見ると、落ち着いた雰囲気のマシンを製作することで知られるサンクチュアリー本店ではあるが、時折、従来とは違うスタイルのマシンが登場することもある。そのほとんどはオーナーの要望に沿った形なのだが、今回紹介するこのZ1000MkⅡもオーナーの好みを最優先して設定されている。

外観上、高い位置に配置されたように感じるヘッドライト&ビキニカウルはハンドルバーを高くしたことの影響だ。スポーツ走行を志向するならハンドルバーは低くしたいと思う人も多いだろうが、オーナーはツーリングなとでの快適性も重視し、高いハンドルバーを希望。そのハンドルありきでビキニカウルは決定されるので、フロントがかなり高くなった印象だ。そしてフロントが高く見える影響もあってかリヤがローダウンしたかのように見えるのだが、車体のディメンションは同社コンプリートマシン・RCMと同じ。RCMに共通する“かつてのフラッグシップモデルに現代的な走行性能を与える”というコンセプトに揺るぎはない。そのスペックは現代的な走行性能を追求したものだ。

Z1000MkⅡ by サンクチュアリー本店

前後ホイールを17インチとし、現代的なハイグリップタイヤを装着して1970年代のバイク以上の激しい走りができることを目指している。その走りを支えるフレームには同社の補強メニューが加えられ、さらに同社で専用設計したスカルプチャー製ブラケットやスイングアームで車体姿勢を前後17インチ化に適した状態を構築。サスペンションの中核パーツにはオーリンズ製ショックユニットを、そしてハイスピードレンジ化してもなお車体を確実かつ安全に制動できるようブレンボ製キャリパーやマスター、サンスター製ローターを採用している。また先に挙げたホイールもO・Zレーシング製ガスRS-Aとアルミ鍛造製ホイールの最新モデルを採用し軽量化とジャイロ効果低減による旋回性アップをねらった。

エンジンは希少な空冷Z系であることを加味してライフ重視のスペックとするが、吸排気をヨシムラTMR-MIN、ナイトロレーシング製フルチタンエキゾーストで整えることでパワフルな特性を追求。ワインディングはもちろん街中でもストレスフリーな状態を目指した。

ただ、こういったパーツを装着するだけなら単なるデコレーションになってしまうところだが、マシンとしての完成度を高めるため、同社ではフィッティングにもかなりの時間を要している。たとえばビキニカウルだ。基本的にビキニカウルを装着する際には外した状態を想定せず、裏側にステーを追加し、確実に固定できるようにしていることも少なくない。ところがこのマシンではビキニカウルを取り外しての運用も前提とし、ビキニカウルを確実に固定させつつ、外せばそのままの状態でネイキッドとして成立するようにヘッドライトユニットの選定やステー位置を熟考しているという。

ビキニカウルは一例ではあるが、細かい話をすればプラグコードやブレーキホースの角度なども意外なほど時間をかけて決定されている。細かい場所にも時間をかけて取り組むことで全体の統一感や完成度も高まる、というのがサンクチュアリー本店のカスタムマシン製作で共通する哲学だ。このマシンもまた、同社の心尽くしが込められている。

カスタムポイント

Z1000MkⅡ by サンクチュアリー本店 カスタムポイント

ツーリングでの防風効果アップを期待してZ1Rのビキニカウルを採用する。ただ、もとが希少価値の高いZ1000MkⅡということもあり、気軽にMkⅡに戻せる構造とした。もちろんZ1Rのカウルステーそのままではライトリムなどが残って違和感が生じるので、その点も考慮して装着するように加工されている。違和感ない仕上がりだが、そのためには少なくない苦労と時間が注ぎ込まれているのだ。


カスタムパーツギャラリー

問い合わせサンクチュアリー本店
住所千葉県柏市大井554-1
電話番号047-199-9712
Webサイトhttp://www.ac-sanctuary.co.jp



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