プロフェッショナルカスタムマシン

プロの製作したカスタムマシンは、市販化されたパーツをただ取り付けるだけではない。取り付けたパーツの性能をフルに発揮できるようにセッティングしたり、細かいフィッティングにもこだわっていて、それがひいてはマシンとしての完成度の高さに結び付いているのだ。その実例をここでは紹介する。

カワサキ
GPZ900R by サンクチュアリー本店

すでに旧車のGPZ900Rに現代に通用する信頼性と走行性能を与える

GPZ900R by サンクチュアリー本店 7:3ビュー

ページを共有

GPZ900Rは直線を基調として構成される独特なシルエットから高い人気を誇り、登場からしばらくは最強・最速の代名詞として、その後継として高出力モデルが登場以降はスタンダードモデルとして長くラインナップに残り、2003年までロングセラーとして親しまれてきた。

それだけに非常に根強い人気を誇っており、中古市場に出回っている中古車の数も、生産終了から20年近い現在でさえ豊富な部類だ。流通数も多いので目にする機会が多いためか、比較的新しい時代のバイクであるという認識の人も少なくないだろう。そこで「程度が良好ではない車両だと安いから、悪い部分は修理がてらカスタムでフォローすれば、すんなりとあこがれのGPZ900Rに乗れる」と考える人もいるかもしれない。

しかし、それは正直なところお勧めはできかねる話だ。というのも人気車種ゆえに乱雑に扱われた車両が少なくないし、また安い個体は初期型に該当するケースも多い。フロントが17インチ化し、対向4ポッドキャリパーを採用して「せめてこのモデル以降を購入したい」といわれるA7ですら1990年製。もう30年前の車両である。それゆえに、GPZ900RをベースとしてカスタムコンプリートマシンRCMを多数製作してきたサンクチュアリー本店でも、カスタムベースとなるGPZ900Rを入手しても、年々程度が悪化することを実感していたという。

そこで「比較的新しいモデルなので、エンジン内部などをオーバーホールせずとも足まわりをリファインすれば十分現代的な走行性能が得られる」という従来の考え方ではなく、一歩先に進んでエンジンのフルオーバーホールや電装類の刷新を含めたメニュー化に着手するようになったのだ。

サンクチュアリー本店がGPZ900RベースでRCMを製作する際、スポーツパッケージとフォーミュラーパッケージの2パッケージメニューが存在する。前者はフレームやエンジンはそのままに足まわりの刷新を主眼とし、後者はエンジン換装を含めたフルカスタムを前提としたメニューだ。スポーツパッケージは製作時にエンジンチューニングやオーバーホールを依頼しない限り、エンジンには手を入れない前提のメニューだった。

ところが先にも触れたようにベース車両の程度が年々低下。エンジンの信頼性からして疑問か生じるようになり、電装類も配線の劣化などが心配になってきたことから、エンジンのオーバーホールとメインハーネス交換など電装類の刷新も前提としたメニューへと進化した。これが現在のスポーツパッケージ・タイプRである。ちなみにスポーツパッケージには、よりライトなメニューのタイプSも存在したが、もはやエンジンに手を入れないGPZ900Rは安心して乗れないと判断して、同社で手がけることはなくなったそうだ。

GPZ900R by サンクチュアリー本店 左サイドビュー

さて、このGPZ900Rもスポーツパッケージ・タイプRとして生まれ変わった一台だ。足まわりはスカルプチャーのブラケットやスイングアーム、オーリンズ製フロントフォークに同リヤショック、O・Zレーシング製アルミ鍛造ホイールという組み合わせて、現代的なディメンションに再構築しつつ、高い路面追従性を発揮できる車体姿勢を追求。反り高い路面追従性をフルに発揮できるよう、ブレンボ製ラジアル4ポットキャリパーやサンスター製ブレーキローターを採用して強力かつ繊細なコントロールができるブレーキ性能が与えられた。さらにマフラーはナイトロレーシング、吸気はヨシムラTMR-MJNで整えられ、ストリートでは必要十分にパワフルな特性を得ている。

そしてメインハーネスはカワサキの高年式車から流用加工して刷新。スイッチ類など電装パーツも高年式車から流用し、純正ならではの高い信頼性を獲得している。

外装は純正パターンながら純正に存在しないオレンジ×ブラックを基調とするカラーリングとなったことで目に付きやすい存在となったが、ただ派手なばかりではない。同社が理想とする「旧車であっても歴代フラッグシップ立ちに現代に通用する高い走行性能を与え、あらゆるシーンを快適に、安心して走れるマシンづくり」を体現する存在として生まれ変わっているのだ。

カスタムポイント

GPZ900R by サンクチュアリー本店

エンジンはヴォスナーノーブレスト製ピストンφ74.5㎜で958㏄にボアアップ。その他は基本的にノーマルのままだが、現行タイプRならではのメニューである焼結合金製バルブガイドに入れ替えたり、クランクの曲がり修正などオーバーホールすることで信頼性をアブさせている。外観はガンコート仕上げだ


カスタムパーツギャラリー

問い合わせサンクチュアリー本店
住所千葉県柏市大井554-1
電話番号047-199-9712
Webサイトhttp://www.ac-sanctuary.co.jp



人気記事