リヤショックの交換も比較的早い段階で行なわれる作業だ。モノショックとツインショックでは、後者の交換は比較的簡単だが、ハンドツールだけでは対処できない。ある程度の準備が必要なので、当記事を参考にしていただきたい。
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ツインショックなら交換作業は簡単! ただし車体を安定させる工夫が必須
ツインショックの着脱作業は、ショック1本に対して上下1本ずつ、合計2本のネジを扱うだけ。車体の内側に存在するモノショックになれば、アクセスする関係で作業は非常に困難になるが、車体外側に位置するツインショックの場合、アクセスしやすいため誰でも着脱作業自体は容易だろう。今回はそのツインショックを扱うが、以下で触れるように作業自体は非常に単純だ。ただ、簡単にするための準備も必要になる。
「まず、メーカーとしては取り付けの準備として、車体を安定させるためにジャッキなどではなく上から吊ることを提案します。そして取り付け後の作業としてセッティングをあらためて行なうことを推奨したいですね。当社だとユーザー個々の体重に合わせて出荷していますが『最終的には自分に合わせる』ということを念頭にセッティングし直してください。そのため1Gでの測定=サグ出しは必須ともいえます」
そのように語るのはナイトロンジャパンの井上浩伸代表。取り付けそのものは簡単だが、その前後の作業にも注意を払おう。
ツインショックの交換前に用意するモノ
必要になる工具は本連載中、最小構成に近い。車種によっては14-17mmのメガネレンチが1本あれば交換作業はできるだろう。ただし油断は禁物だ。そもそもリヤショックは車両の重量を支えているパートであることを忘れてはいけない。乱暴に扱うと車体の安定を損ない、転倒につながる危険性も高まる。適切な工具を用意すること。
題材としたZRX1200ダエグだと、必要なのは14-17mmメガネレンチと6mmヘックスソケット、そのヘックスソケット用のラチェットレンチのみ。狭いスペースでの作業となるが、比較的高トルクが必要なのでソケット差し込み口は12.7sq.が推奨だ
車体を安定させるため、同社はバイクリフトの使用を推奨する。ジャッキ類は車体が不安定になるので極力使わないこと。およそ2万5,000円だが、DIYで行なうなら必要な投資と割り切りたい
ノーマルのツインショックを外そう
純正ツインショックを外すこと自体は非常に簡単だ。とはいえ、それも車体が安定していてこその話。あとは以下の写真で触れるように順序だ。単純な話だが、支える重量が少ないほど作業は楽になる。そのため下から上に外すと簡単に外せる。
まず車体を安定させるところからスタート。いきなりバイクリフトは荷が重いと思われそうだが、メーカーとしては確実に安定できる状態保持を推奨している
外す順番は下から。続いて上側を外すと簡単。下を後にするとリヤが浮いた不安定なスイングアームを支える必要も生じるからだ。その後、上側を斜めにして取り外そう
外車や旧車だと車体側の軸受けの車体ごとの公差や、塗装の厚みによって、取り付けが難しいこともあるそうだ。そんなときは無理せずショックメーカーに相談すること。ショックメーカーも対応のため複数のカラーを持っていることが多いのだ
社外品のツインショックを装着する
社外品のツインショックを装着するのも純正を取り外す際と同様、簡単な作業ではある。純正と同じく、締結には2本のネジしか使われていないからだ。取り付け時の注意点としては締めすぎを挙げたい。緩むと重大事故につながるので、適正なトルクで締結しよう。
こちらがナイトロンのセット内容だ。左上はマニュアルで、左側中央に見えるのはプリロードアジャスター調節用ノブとなる。その下のヘックスレンチは減衰力調整ノブ用だ
[POINT]片方ずつ装着する
ツインショックはコの字状のスイングアームを左右から吊っている状態でもある。つまり、いきなりショックをすべて外すとスイングアームを吊るモノがなくなるため、装着時には最低限1度、スイングアームを支えつつ取り付ける必要が生じる。単純に入れ替えるようにすれば最小限の手間ですむのだ。
交換作業に手慣れている同社ではあまり意識したことがないという取り付け時の養生だが、カチ上げ気味の社外マフラーだと干渉が怖いので、できれば養生しておきたい。手慣れていなければなおさらだ
純正を取り外した際と逆に、上側を軽く締めてから下側を締結する。ここでいきなり本締めせず、脱落しない程度に軽く締めておけば問題ない。本締めはこの後だ
[POINT]多少のズレは必ず生じる!
先に『コの字状のスイングアーム』と話したが、スイングアームは左右ショックとピボットの3点で支えている関係から、片側のショックを外すと支えが減り、わずかに全体が歪む。するとショック取り付け位置も微量にズレるため、リヤタイヤを押し上げるなどの工夫が必要になる。これはスイングアームの形状から必ず起こる現象だ。
写真左側のように取り付け位置にズレが生じているのがわかるだろう。今回はリヤタイヤを少し浮かせて位置を是正し、ネジを入れたが、交換時に多少のズレが出るのは仕方がないことなのだ
左右を交換してから本締めだ。ありがちな失敗が『緩むと怖いから』と力いっぱい締めて動きを阻害させてしまうこと。くれぐれも適正なトルク管理で正しく動くように取り付けてほしい
ツインショック装着後のセッティング
ツインショックの交換後にもっとも重要になるのがセッティングだ。まずは1G状態を探ろう。今後、プリロードや減衰力を変更するうえで基準になる数値だからだ。基準がないと応用はできないので、まずここからスタートしたい。
1G状態でのショック全長 (=サグ出し) はセッティングの基準点。今ではナイトロンジャパンが取り扱うMotoolのSlacker Digi Sag Scaleを使えば電子的に測定可能だ。まずリヤショックを浮かせた状態を基準点としてセットすると、無乗車、そして乗車時のストローク量がひと目で判明する。まずは乗車時30mm前後になるようショック側の設定を調整したい
調整機能を活用しよう
ショックの調整は大きくバネのプリロード、本体側内部に発生する伸び側/圧側減衰力の3つで制御する。まずバネを伸び縮みさせるプリロード(写真右側)を変更してみよう。左のノブは圧側減衰力用だ
伸び側減衰力はショック下部のノブになる。よく「変更しても違いが分からない」といわれるが、大きく変更してみると非常にわかりやすい。不安を感じたらもとに戻せはいいだけだ