プロフェッショナルカスタムマシン

プロの製作したカスタムマシンは、市販化されたパーツをただ取り付けるだけではない。取り付けたパーツの性能をフルに発揮できるようにセッティングしたり、細かいフィッティングにもこだわっていて、それがひいてはマシンとしての完成度の高さに結び付いているのだ。その実例をここでは紹介する。

カワサキ
Z1R by サンクチュアリー本店

ありそうでなかったZ1Rのバーハンドル+フレームマウントカウルの組み合わせを違和感なく実現

Z1R by サンクチュアリー本店

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空冷Z系のなかでも特異なデザインを採用するZ1R。カフェレーサーライクなビキニカウルだけではなく、Z1以来の曲線的なデザインから直線を多用した鋭角的なデザインを採用するなど、今なおその存在感の高さは一層際立っているといえるだろう。

Z1R by サンクチュアリー本店 サイドビュー

そのZ1Rをベースとしてカスタムマシンを製作したのはサンクチュアリー本店。20数年に及ぶ同社の歴史上、今や700台以上のカスタムコンプリートマシン”RCM”を製作してきたが、そのカスタムスタイルにはいわゆる定番が存在し、そこから大きく外れることは多くない。というのも”サンクチュアリー本店製作のRCM”を求める声が圧倒的に多いからで、ほとんどの人は雑誌やインターネット上でRCMのことを熟知したうえで同社に製作を依頼している。つまり過去に製作されたRCMを踏襲したマシンに自分も乗りたい、という人が多いわけだ。

ただ、一部には例外もある。一定のスタイルの範疇ではあるものの、そのなかに自分の個性を盛り込みたいと思う人も一定数はいるものだ。今回紹介するRCM-576もまた、そのようなオーナーの意向が盛り込まれることになった。それが『バーハンドルでありながらビキニカウルのフレームマウント化』だ。

RCMとはカスタムマシンであることを踏まえ、性能面と見た目の両立を重視している。つまり性能さえ高ければいい、カッコだけよければいいという選択肢はない。しかし、ビキニカウルをフレームマウント化したうえでバーハンドル化させると、ブレーキ/クラッチマスターのレバーがビキニカウルと干渉してしまう。それを避けるにはビキニカウルを前方にせり出させて干渉を回避するしかないが、それではカッコよさをスポイルしてしまう…。

何の制限もなく「ビキニカウルのフレームマウント化とバーハンドル化を同時に行なってほしい」というカスタムオーダーであるのなら、とくに問題はない作業ではあるだろうが、このマシンはRCM。サンクチュアリー本店が製作する最高峰のカスタムマシンという位置付けである以上、見た目をスポイルすることは許容できなかったという。

そこで担当メカニックも苦戦しつつ、ハンドル切れ角はスカルプチャー製SPステムキットそのものの切れ角を確保しつつ、ビキニカウルは極力前に出さずに取り付けられている。このあたりの調整は同社だと㎝どころか㎜単位での調整を繰り返しており、見た目のバランスと実用面の両立を徹底的にこだわっている。

なお、Z1R純正はメーターやビキニカウルなどがすべてステムブラケットに装着される関係からフロントヘビーになっており、ハンドリングに関しての評価は正直高くはない。その最大の泣きどころをフレームマウント化によって改善すれば、ハンドリングへの効果も絶大とのことだ。

そしてそのハンドリングの向上効果をさらに高めるよう、足まわりには国内外の一級品を投入。O・Zレーシング製アルミ鍛造ホイール、ブレンボ製ブレーキキャリパー&マスター、サンスター製ディスクローター、オーリンズ製前後ショックユニットで足まわりを構成。高品質・高性能なパーツ構成だけではなく、同社によってストリートユースに最適なセッティングを行なうことで、それらのパーツ性能を引き出し、ハイレベルな走行や多彩なシチュエーションに対応できるようにしている。

エンジンそのものはロングライフを志向して極限的なハイチューンは行なわれていないが、オイルをエンジン内に効率的に循環させるトロコイドローター式ハイプレッシャーポンプや、扱いやすさを向上させる6速クロスミッションEVOシステムを導入。より長く、安心して乗れるパワーユニットとしている。さらに吸排気も整えることで純正状態よりもよりパワーを実感できる仕様となっている。

先に挙げたビキニカウルのフレームマウント化+バーハンドル以外にも、オーナーのこだわりは細部にもおよび、メーターやウインカー、グラデーションパターンなど多岐に渡る。一つひとつの要望をどうすれば実現できるのかをオーナーとディスカッションを重ね、かつ性能をスポイルせず見た目を重視して時間を要しても納得する仕上がりを追求。「パッと見てサンクチュアリー本店のRCMは派手さはないが見た目がキレイ」という評価をよく聞くが、細かい作業の積み重ねによって見た目のバランスを徹底的に追求する姿勢こそが、そのキレイさを導き出しているのだ。こういった姿勢は一般ユーザーがカスタムする際にも意識して見習っていきたいところだ。

カスタムポイント

Z1R by サンクチュアリー本店 ビキニカウル

ビキニカウルの位置関係には非常にこだわっており、ハンドル切れ角を最大化させつつ違和感のない位置とするため、㎜単位での微調整を繰り返している。またウインカーもブラケットからわざわざ新設し、最適な位置に配置。サンクチュアリー本店製作のマシンはこのように細かい部分を徹底的にこだわるからこそ、高い完成度をもたらしているのだ


カスタムパーツギャラリー

問い合わせサンクチュアリー本店
住所千葉県柏市大井554-1
電話番号047-199-9712
Webサイトhttp://www.ac-sanctuary.co.jp



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