カスタムパーツの選び方

カスタムパーツは各種ともさまざまなラインナップが並んでいる。そのなかから何を選べばいいのか、少なからず悩むことも多いだろう。そこで本コーナーではカスタムパーツを選ぶうえで、どうすれば失敗しにくいのかのポイントを紹介する。値段や見た目以外にも、考えておきたいポイントは数多い。ぜひ参考にしていただきたい。

スロットルの選び方。ハイスロットルとロースロットルは使い方で選びたい

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運転時にはつねに操作するパーツだけに快適性をも左右するスロットル

バイクを操縦するうえでスピードコントロールの要となるスロットル操作。スロットルのカスタムというとキャプレターをレーシングキャブレターに交換した際に、スロットル開度を狭くする、いわゆる“ハイスロ”にすることがよく知られている。

ハイスロ=ハイスロットル化はサーキットなどでスロットル開度を全閉から全開にする際に、スロットルを握り直して開かなくてもいいようにするためのもの。通常のスロットルだと全閉から全開までに一度握り直す必要があり、それがサーキットでは不要な動作となってタイムロスにつながるし、手首の負担になるため、最初からスロットル開度を狭くして、わずかな操作でもスロットルが開くようにしているのだ。その結果としてスロットルワークに対してレスポンスアップにつながるし、瞬時の加速などがしやすくなるといったメリットが生まれる。

スロットル開度
純正のスロットル開度はスーパースポーツだと70度くらいで、ツアラーやネイキッドだと85度くらいに設定されている。全閉状態からグリップを握り、全開になるまでスロットルを持ち替えることなく操作するのは困難。そこで開度を狭くし、持ち替えなくても全開にしやすくするのがハイスロだ

このハイスロ用キットがカスタムパーツとして長く流通していることもあり『スロットルキット導入=ハイスロ化。ゆえにカスタムではハイスロ化するのが正解であり、その結果として快適性や操作性アップにつながる』という認識の人も多いだろう。

ところがそれは一面でしかない。場合によってはスロットル開度をより広くする、ロースロットル化が正解のこともある。ではどんな場合にロースロ化が有効なのか。たとえばレーシングキャブレターを導入すると、操作が重くなったと感じることがある。負圧式から強制開閉式になることでダイレクトな操作感は得られるが、操作性は重くなることも。ツーリングユースではそれが負担になることもあり得るが、開度を広くすればスロットル操作を軽くすることにつながるのだ。レーシングキャブレターに限らず、高回転域ではなく低中回転域を多用することが多いビッグバイクでも有効になるだろう。

さらには、スロットル開度が広くするということは、ダルな特性を意図的に作り出せることを意味する。わすがなスロットル操作で唐突にパワーを発揮させないようにすることは、とくにレーシングキャブレターの唐突なパワー感に慣れてない人にとっては有効な手段になり得るのだ。

そのため自分の乗り方やバイクの用途をよく考え、ハイスロかロースロのいずれかを選択するようにしたい。

FCRキャブレターの操作性の改善
FCRキャブレターはTMRと比較して、高回転域でのパワーフィールにすぐれるが操作性が重いと評されることが多い。その操作性を軽くするために純正スロットル、あるいはさらなるロースロットル化を選択するのもアリだ。スロットルはセッティングパーツでもある。自分の好みのフィーリングがもっとも重要なので、他人の意見より自らのフィーリングを重視して選択したい

基準は純正サイズ。そこからの大小でハイ/ローが決まる

では、ハイスロかロースロかにしてみたいと思ったとき、何を基準にすべきか。基準は純正スロットルの巻き取り径だ。スロットルはスロットルバイワイヤなどの電子制御されたモノを除き、スロットルと吸気装置(キャブレターやインジェクション)はワイヤーを介してつながっていて、スロットル開度に合わせてスロットル内部でワイヤーが引っかかっている巻き取り部も一緒に回転し、吸気系を操作するという仕組みだ。この巻き取り部の径、巻き取り径の大小でスロットルのハイ/ロー化が決まる。

その純正の巻き取り径の多くはφ35㎜前後に設定されている。なのでφ35㎜を基準にすればいいだろう。たとえばアクティブ製スロットルキットならφ28〜44㎜まで用意されているので比較もしやすい。同社製はインナーパイプのみの交換が可能となっていて、セッティングという意味でも変更しやすいのが特徴。こういったモノを選択し、いろいろとフィーリングを比較してみるのもいいだろう。

スロットルインナーパイプ径の違い
アクティブ製なら6種類のインナーパイプ径違いがリリースされている。このインナーパイプだけを交換することもできるので、サーキットならコレ、普段の街中だとコレ、ツーリングならコレ、といった使い分けも自在だ

キモはインナーパイプの“径”

インナーパイプは巻き取り径の違いで数種類がラインナップされており、アクティブからはφ28㎜から、タイプによって異なるが最大でφ44㎜までが用意されている。そこで知るべきは純正の巻き取り径だが、これはアクティブのホームページで確認することができる。純正はφ35㎜前後が多いため、これより大きくすればハイスロットルに、小さくすればロースロットルになるというわけだ。

スロットルキットのキモとなるインナーパイプ
スロットルキットのキモとなるインナーパイプは、先端にある巻き取り部分の径でスロットル開度を変えることができる。このパーツ自体は安価なため交換もしやすい
ゼファー1100RSの場合
たとえばゼファー1100RSの場合は純正のスロットルはφ32㎜でスロットル開度は85度となっているが、これをφ44㎜に変更するとスロットル開度は61度となる。逆にφ22㎜にするとスロットル開度は97度になる

なお、スロットルキット購入時には注意も必要だ。純正スロットルはスイッチボックスと一体式になっていることが多く、スロットル部分のみ交換することができないこともある。また、車種専用のスロットルキットは純正キャブレターや純正インジェクションが前提に設計されているため、レーシングキャブレターとセットで使うなら、車種専用品ではなく汎用品を活用する必要がある。

スロットル変更に必要なアイテム

ハイスロットルやロースロットルにするためには、社外のスロットルキットを使うのが手軽だ。車種専用設計のモノはワイヤーなども車体に合わせて作られているため交換しやすい。ただこの場合、キャブレターやインジェクションなどは純正が前提となるため、レーシングキャブレターを使う場合は汎用品から選ぶ必要がある。また、ハンドルを交換している際もワイヤーの長さが合わなくなる場合もあるため注意が必要だ。ワイヤーは短すぎても長すぎてもハンドル操作に悪影響を与えかねないからだ。また、スロットルを交換する際には、別途スイッチキットを用意する必要性が生じる場合がある。

アクティブのスロットルキット
アクティブのスロットルキットは車種に合わせたスロットルワイヤーのほかにスロットルホルダー、インナーパイプがセットとなる。写真は薄型のスロットルホルダーを採用したタイプ3だ
純正スロットル
純正スロットルはスイッチボックスもかねているモノが多い。社外のスロットルキットに交換した場合はスイッチキットも必要だ
スーパースポーツのスロットル
スーパースポーツはスイッチボックスとスロットルが別体のモデルが増えており、この場合はスロットルキットのみの交換でOKだ
ネイキッドのスロットル
ネイキッドなどはスロットルとハンドルスイッチが一体となっているため、スロットルキットを交換する際にはスイッチキットが必要になる

車種専用品とは、その車種であればどんなカスタムにも対応するわけではない。そのためカスタムを前提とする場合には、何が純正と異なるのかをしっかり確認し、その変更に即したパーツを用意する必要がある。これはカスタムの鉄則であり大前提だと覚えておこう。

ここからは少し余談になるが、ではスロットルバイワイヤなど電子制御化されたスロットルではハイ/ロースロットル化はできないものなのだろうか? 某パーツメーカーとも少し話してみたが、現在スロットルバイワイヤなどの電子制御スロットルを採用する車種のほとんどは、すでにフルパワーやレインモードといったモード切替が複数用意されているモデルだ。そういったモデルはレインモードを選ぶとスロットルの操作感そのものは変わらないもののロースロットル化したときのようなパワー伝達となるそうだ。現状、その某メーカーでは電子制御スロットル用のハイ/ロースロットルキットの開発は予定にないそうだが、今後製作するとなれば現状のような機械的な制御ではなく、サブコンのような電子制御という形になるのでは、とのことだった。

ともあれ、現状では電子制御スロットルに対するハイスロットルキットは発売されていないので、同車種オーナーはパワーモードを活用して対処いただければと思う。



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