ステップは乗りやすさを大きく左右するうえ、車体下部のアクセントにもなる。それだけにステップは交換率が高いパーツだ。見た目の面から交換されるケースも最近では多いが、当然ながらステップとは機能パーツ。確実に取り付けたい。
所要時間:120分〜
ステップの取り付けは容易だが、その後の調整に時間を使いたい
ステップ交換はパーツ交換でも簡単な部類と思われていそうだが、まず触れたいのが“素人でも取り付けられる”というのは正確ではないという点。ひと口に“素人”といっても幅広い。今日初めて工具に触った人から、プロとして報酬が発生しないだけのエキスパートまで含む。まずは製品に付属するマニュアルを熟読し、内容を理解できれば取り付けはできる。ただし、正確に機能させるにはまた別の知識と作業スキルが必要となる。
「ステップの構造は単純ですから、取り付けるだけなら、工具を使い始めたばかりの人でも何とか取り付けられるでしょう。しかしステップは、ただ箱から出して内包物を組み立て、車体に取り付ければ完成、という性質のパーツではありません。取り付け後にはセッティングが必要ですし、振動が多い場所なので正確かつひんぱんなメンテナンスも必要です。不安であれば無理をせず、スキルのあるプロに依頼すべきです」
このように語るのはベビーフェイスで開発を担当する池田宏光氏。あまり安易に考えず、以下の内容に不安を覚えればプロに依頼してほしい。
ステップの交換前に用意するモノ
ステップは購入後、構成パーツを組み立て、純正ステップを取り外し、そして社外ステップを取り付ける作業が必要になる。そのため複数の工具を用意したい。まず、リンクロッドを調整するために用いられるダブルナットを取り外すため、10-12mmのレンチがそれぞれ2本が必要。メガネではなく片口を用意したい。両口スパナはブレーキの高さ調整用で、今回はアクセスしやすい薄型タイプを用意した。また車体への取り付けはヘックスネジを使うため、ヘックスレンチには力を入れやすいT型レンチもあるといい。ラジオペンチはブレーキマスターとペダルを締結するピンを取り外す必要がある車種もあるため、今回は用意した。
このなかでもとくに必要なのがヘックスレンチ(ヘックスソケット)と片口レンチ。入り組んだ場所に工具を差し込むことは少ないが、全体的に高いトルクが必要になるので、信頼できるブランド品を用意したい
ノーマルステップを外そう
ステップは取り付け時より、取り外す際に気をつけるべきポイントが多い。不用意な作業をしないのはもちろん、ABSなど配線の有無にも気を付けたい。
ロッド部分には緩み止めのためダブルナットが使われている。このボルトの意味を知らないと、ボルトをどう締めるべきか、緩めるべきか判断できない。ステップの取り付けに最低限の知識が必要な理由は、こういった特殊な締め方が採用されているためだ
ステップはペダルなどの構成パーツが固定されていない。そのため不用意な扱いをすると各パーツが不意に動き、周辺パーツをキズ付けることも。養生テープやウエスなどで保護してから作業を進めたい
取り外し作業の基本でもあるが、パーツが脱落しないよう、ネジ類は下から外していくこと。とくに上下で締結されているパーツの場合、上から外すと下のネジを起点に下側へ回転し、下側をキズ付けることも。脱落予防として手で支えるのも忘れずに
社外品のステップを装着する
取り付け自体は多少の整備経験があれば非常に容易な部類ともいえるが、取り付け時にいきなり本締めしないこと。まずはすべて軽く仮留めし、干渉などがないことを確認し、かつポジションを確定させてから本締めすることを心がけたい。
こちらがベビーフェイス製ニンジャH2用ステップの構成パーツ。ニンジャH2など現行車はシンブルな構成なうえ、マニュアルが付属しているので、そのとおりに組めば問題ない。とはいえ、確実な取り付けが必要になるため、難易度は決して低くない。少しでも自分の作業に不安があればプロに依頼するべきだ
本来は装着前ではなく取り外す際に車体をまっすぐ立てて固定しておきたい。ステップは車体下部にあるため、とくにスタンド側(車体左側)が作業しにくいためだ
取り外す際に注意したように、車体へ固定するネジは上から装着していく。またペダルが不用意に動かないよう手で触れておくか、テープで固定しておきたい
[現行車は配線に注意]ABS採用車は配線が鋼管で構成されているので、ブレーキマスターの自由度がABS未採用車に比べて格段に低い。ニンジャH2の場合、この程度しか動かせないのだ。そのため配線を社外ステップに取り付ける際、車体近くで作業する必要がある。無理に動かすとエア混入の危険性も高いので慎重な作業を心がけること
オートシフターが採用されている現行車だとシフトペダルのロッド長(より正確にはロッド取り付け部の長さ)が厳密に決められている。その長さも付属するマニュアルに従って調整する必要がある
[リンクの角度に注目]リンクロッドを組む際、入力方向に対して角度が90度になるように装着すること。車種によってこの角度は異なることもあるが、メーカー側は動きやすさを考慮し、90度付近の角度に設定していることが多いためだ。なお、90度付近にすれば必ずペダルの位置関係が正しいとは限らない。調整をスタートさせる前提の作業なのだ
ステップの組み立ては最初にすべて組み立てて車体に装着するのではなく、ベースをまず装着してから組もう。ヒールガードなどは車体にベースプレートを取り付けてから装着するほうが大きな力をかけて固定させやすいからだ
近年はバイクそのものがコンパクトになっているので、各部のクリアランスに余裕がないことも多い。そのため装着時には各部のクリアランスに注意したい。とくに可動部は動いたときに周辺パートの干渉がないかを必ず確認しよう
最終的な本締め時にはネジロック剤を用いたうえで、マニュアルに指定されているトルクより1割増しくらい強力に締めておくこと。ただしネジロック剤を用いるのは車体との締結部分で、調整に用いるリンクロッドなどには使わないように
ステップのセットアップ
ステップの場合、もっとも重要になるのがポジション位置を確定させるための調整作業。現在のステップは位置を可変できるので、その機能を活用し、自分にとって乗りやすいポジションを作っていこう。
ステップ位置を決める際、普段乗る際に履くブーツなどを用いること。ソールの厚みやヒールの高さ、トゥの厚みによってペダル操作やポジション移動のしやすさが変わってくるため、求める位置も変わるからだ。これらの操作は個々人ごとに求める要素がかなり変わる。自分本位で位置を決めよう
ポジションを決める際、乗車状態で垂直に車両を立ててから行なうのが大前提。その際、可能なら数人で車体の前後を支えてもらい、車体をまっすぐにする。信号待ちの要領で片足ごとに交互に決めると、車体が傾いている状態でポジションを作ることになるので、走行状態から離れてしまうからだ。また、ポジション決めの際はセンタースタンドやメンテナンススタンド使用は非推奨。リヤの車高が上がるので乗車姿勢が前下がりになり、適正なステップ位置がスタンドの使用時・未使用時で変わってしまうためだ。その後、位置関係を調整したうえで実走し、さらに細かな位置関係を調整する。最後に各部を本締めして装着はようやく完了する