加工&処理の種類を知ろう

カスタムを進めるうえで“○×処理”や“△□コート”という名前はよく耳にする。しかし、その単語を知っていたとしても“どういった効果が望めるのか、どのような工程を踏まえるのか”といった詳細までは知らない人が多いのではないだろうか。そこで今回は、その道のプロフェッショナルに話を聞いた。理解を深めたうえで、愛機に導入するかを検討してほしい。

外観の差異とともに摩擦係数を減らす「チタンコート&カシマコート」を知ろう

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サスペンションまわりに気を配っている人は“チタンコート”と“カシマコート”という用語を目にしたことがあるだろう。これらのコーティングはどういったねらいで行なわれるモノなのだろうか?

金属をコーティングして摩擦係数を低めるチタンコート

純正のフロントフォークのインナーチューブを見てみると、そのほとんどがシルバーだ。これは、硬質クロームめっきがほどこされているため。ところがカスタムシーンを見ていると、純正フォークのインナーチューブの色が金色に変わっていたりと、社外フォークのインナーチューブの色が銀色とは限らないことに気付くだろう。これはどういったねらいで行なうモノなのだろうか? サスペンションのスペシャリストであるテクニクスの井上浩伸代表に話を聞いてみた。

「金色になっているのはチタンコートですね。そのメリットは二つあります。一つ目はチタンコートはめっきよりも表面硬度が高く、キズが入りにくくなること。ショックは上下に動くため、縦キズが入りやすいのですが、チタンコートの方が入りにくい。二つ目がめっきよりも摩擦係数を低くできること。よりスムーズな動きがねらえるのです。
ただ、注意してほしいのが、チタンコートをほどこすと表面がツルツルになるため、オイルが付着しにくくなる面があることです。使うシールやオイルによってはフリクションが大きくなり、かえって動きが悪くなるので注意が必要。そのため当社では、純正シールよりもローフリクションなSKF製の併用を推奨しています」

なお、チタンコートは金属をイオン化させてコーティングする、いわゆるPVDコーティングの一種。さまざまなカラーリングが存在するが、チタンが含まれていないこともあるので、厳密にはチタンコートといえないモノも。ただし、同様の効果が望めるため、チタンコートと総称することが多いようだ。なお、どの色でも硬質クロームめっきの上にほどこし、厚さも2〜3/1000㎜と非常に薄い。そのため下地の状態が重要になってくるという。

チタンコート
チタンコート
DLC
DLC
硬質クロームめっき
硬質クロームめっき

一部の車種でDLCがほどこされている車両もあるが、純正フロントフォークは一般的にインナーチューブには硬質クロームめっきがほどこされる。チタンコートは社外品であれば標準で処理されていることも多い。一番左はいわゆるチタンコートだが、色によってチタンを含まないこともある

アルマイトの一種でモリブデンにより硬度を高めるカシマコート

カシマコートはチタンコートとは別モノで、アルマイトの一種ともいえる加工だ。ハードアルマイトに近いが、ハードアルマイトよりも硬度が高く、分子のすき間にモリブデンが入り込むことで潤滑の役割をはたし、硬くて滑りやすいという性質を持つので、よりスムーズな動きに結び付くことになる。

とくに効果的になるのは、接触面の圧力が高くなり、細かい振動や摩擦が起こる場所に使うと通常のアルマイトではカジリや焼き付きが起こるようなパート。耐摩耗性にすぐれることから、バイクだとサスペンションのアウターにほどこすことが多い。またトロコイドポンプの内側、カムシャフトのロッカーアーム、ピストンへの施工例も存在する。

ただし、アルマイトに比べてモリブデンを含む関係から茶色や黒など、使用できる色が限られてしまうのが数少ない弱点だ。

冒頭に掲載したナイトロン製リヤショックのピンクのボディはハードアルマイトだが、左はカシマコートがほどこされている。チタンコートにせよ、カシマコートにせよ、単純にドレスアップ目的で行なわれるのではなく、性能を考慮して行なわれるコーティングなのである。

取材協力テクニクス
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