カスタムパーツの歴史

長いカスタムシーンにおいて、一世を風靡して高い知名度と採用率を誇った歴史的な名品とされるパーツがある。すでに販売終了になって久しいものも少なくないが、それらの輝きは現代にあっても決して色褪せるものではなく、一部は今なお逸品として求める声も少なくない、そういった歴史的な名品の意義や存在を当時を知らない新しいユーザーにはあらためて知っていただきたく、かつ古いユーザーにはその存在を今一度再認識していただくべく、本コーナーでは過去に本誌が収録した記事を再構成してお届けする。
なお、とくに断りがない限り、本コーナーの時系列は記事製作当時に準拠しており、名称や価格などもそれ自体に歴史的な意義があると判断し、可能な限り記事そのままとしていることをご了解いただきたい。

[カスタムパーツの歴史]RPM・67Racing

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カスタムシーンには高い知名度と採用率を誇る歴史的なパーツがある。80年代を代表するマフラーとして、国産初の4-2-1という画期的なレイアウトを採用したRPMの『4in2in1』が挙げられるが、そのレプリカモデル『67Racing』を紹介しよう。

1度はあきらめかけた「4in2in1」

『村島製作所』という社名で四輪のレースに携わっていた現RPM代表の村島氏が、初めてバイク用のマフラーとして世に送り出したのは70年代後半にリリースされたCB750F(Z)用のマフラーだ。ちょうどそのころ、カートのフレームなどの四輪用のパーツを数多く手がけていた村島氏が、二輪用のパーツについても『今までにない、よりいいものを作りたい』という強い思いのもと、当時としては国産初となる4-2-1タイプのオリジナルマフラーの製作を決意。ホンダのレーサーRCBのマフラーを参考に製作された。もちろん国産初というだけに、ほかに見本となるモノがあるはずもなく、その作業は困難を極めたという。その当時の苦労について村島氏はこう語る。

「やっぱり苦労した点といえば、まず集合部をどうやって作ろうかっていうところからですよね。その当時は4-1の集合マフラーでも、そのほとんどはプレスで波形に突いて、パイプを差し込んで裏方に板を貼って留めるような作り方をしてたんです。けど、やっぱりちょっとそれじゃあカッコ悪いっていうことで、最終的にパイプを加工してああいう形にしました。ただ、そのときに見本になったRCBのマフラーは全部手板金で、板から作ってたんですよ。でも、それだと全然量産性がよくない。では量産性をよくするにはどうすればいいか。抵抗がないようなものにするにはどうしたらいいか。その点に半年ぐらい悩みました。試作も相当作ったし、それこそあきらめかけたこともありましたね(苦笑)」

苦労しただけに、その完成度の高さから初めてその商品を持っていった大阪の『日交部品』では大絶賛。そこで、当時の人気車種だったZ400FX用のマフラー製作を勧められたことから、いざやってみたところ、これがほぼ発売と同時に大ヒット。その後はCBX400F、XJ400、GSX400Fといったミドルクラスのマフラーを次々とリリース。バイク市場の急激な活性化とともにその販売数も増加したことから生産能力が追いつかず、80年代初頭のピーク時にはバックオーダーで半年待ちというのもザラにいたという。

「そのころの社屋は10坪ぐらいでした。毎朝、工場のなかの箱を全部出して、作業スペースを作って、バイクも全部出してから作業スペースを作るので、もう準備だけで1時間ぐらいかかりました。終わってからまたそれをしまうのも1時間かかったりね。そういう時代でした」

RPMロゴ
1982年に『村島製作所』からそれまでブランド名だった『RPM』に改組。ちなみにその社名は「RACING PROJECT MURASHIMA」の頭文字を取ったもの

伝統のレイアウトを受け継ぐ「67レーシング」

今回紹介する『67レーシング』は、当時の『4in2in1』の初期モデル(Ver1.0)を忠実に再現しながら、新素材の採用により、パワーアップして1998年にリリースされたモノとなる。その最大の特徴となる外径φ67mm、長さ300mmのスリムなサイレンサー、耐久性と光沢感にすぐれたダブルニッケル+硬質クローム・メッキ加工がほどこされた4-2-1タイプの美しいエキゾーストパイプなどにより、外観はまさに初期モデルそのものといったディテールを持つレプリカモデルだ。

音量は当時の規制値である99dBに抑えられているが、最近ではユーザーの年齢層が高くなってきて、さらに音量を下げたいというリクエストが増えてきたことから、約5dBほど音量を下げる専用設計のエンドバッフルをリリース。ユーザーのニーズに細かく対応している。

RPMマフラー テールエンド
初期モデルを忠実に再現したテールエンド。インナーパイプは一見、太いパイプのように見えるが、実は奥に向かってフロート状になっている
RPMマフラー サイレンサー
外径φ67mm。長さ300mmのスリムなサイレンサー。4-2-1のレイアウト同様、このマフラーが持つ個性をもっとも強く感じる部分である

そもそも、初期モデルの販売から20年近く経てから、あえて製作に踏み切った理由、また現在(※2020年1月現在)も販売し続けている理由について村島氏は次のようにコメントする。

「やっぱりそれを求めている熱いユーザーに応えたいというのが一番の理由ですね。あとは最初のころっていうのは消音材もあんまり質のいいモノがなかったんですよ。グラスウールも燃えやすかったりとか。そういう素材についてもどんどんいいモノが出てきたので、たとえば素材をよりいいモノに変えたりとか、強度的に不足していた部分を強化したりだとか、やっぱりそういうことができるような時代になったというのもありますね」

ちなみに、そのベースとなっている初期モデルのことを『規制前』という表現をすることが多いが、これについて村島氏はこう語る。

「よく言われることですが、それは明らかに違います。当時はボルトオンで着脱できるインナーサイレンサーが、音量の大小によって2種類ラインナップされていて選べるようになっていました。ですが、それを抜いた状態で『規制前』として売った販売店があったことから『規制前』という言葉が一人歩きしてしまった、ということなんです。実際は音量の大きなインナーサイレンサーでも、規制値の99dBを超えないように作ってありますから」

現在も4-2-1マフラーのパイオニアとして、そのノウハウの集大成ともいえる『NEW421シリーズ』を展開するかたわら、80年代のミドルクラス用マフラーを今もなおラインナップし続けているRPM。その理由は明快だ。

「昔の商品を外すと、それを使い続けている人へのサービスができなくなってしまいます。どんどん新しいモノへ移行していくのも、それはそれでいいとは思います。ただ、ユーザーのなかには、古いバイクに乗り続けている人もいるわけじゃないですか。そういう人たちのためにも、やっぱり安易にラインナップからそれを外すわけにはいかないんですよ」

『67レーシング』も、創業当時から変わらぬ値段でラインナップされているが、これからも新しい『NEW421』シリーズと並行して販売し続けていくつもりだそうだ。

RPM Z400FX用マフラー
1980年の発売と同時に爆発的なヒット作となり、ある意味その後のRPMの方向性を決定付けることになったZ400FX用マフラー
RPM CB750(Z)用マフラー
RPMが初めて取り組んだ国産初のバイク用4-2-1マフラーのベースとなったCB750F(Z)。すべてはここから始まったのだ

次世代の4in2in1 NEW421シリーズ

4in2in1マフラーのパイオニアとして1980年以来、数多くのマフラーを作り続けてきたRPMが、そのノウハウの集大成として市場に投入した、次世代の4in2in1マフラー『NEW421シリーズ』。より高度な仕上がりを求めたトリニッケル・クロームメッキ処理、より音質を向上させるためのSTKM(機械構造用薄肉鋼管)の採用など、最新の技術を惜しみなく投入。RPMならではのメッキ加工については、手仕上げによる入念な研磨仕上げをした後、定着用下地ニッケルメッキ処理→普通ニッケルメッキ処理→光沢ニッケルメッキ処理→硬質クロームメッキ処理という、4層のメッキ処理がほどこされているという。またサイレンサーには外径φ93mm、長さ450mmのステンレス製を採用。インナー&エンドバッフルなどのセッティングパーツによる背圧調整も可能としている。

RPM 421シリーズ CB400SF用マフラー
RPM エンドバッフル
RPM インナーバッフル
RPM 421シリーズ サイレンサー内部

ステンレス製のサイレンサーは完全ストレート構造。排圧の調整については、インナーバッフル(φ15.9mm〜φ42.7mm)およびエンドバッフル(φ15.0mm/φ25.0mm)の組み合わせで行なう

取材協力RPM
電話番号042-667-8435
Webサイトhttp://rpm421.com


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