カスタムパーツの歴史

長いカスタムシーンにおいて、一世を風靡して高い知名度と採用率を誇った歴史的な名品とされるパーツがある。すでに販売終了になって久しいものも少なくないが、それらの輝きは現代にあっても決して色褪せるものではなく、一部は今なお逸品として求める声も少なくない、そういった歴史的な名品の意義や存在を当時を知らない新しいユーザーにはあらためて知っていただきたく、かつ古いユーザーにはその存在を今一度再認識していただくべく、本コーナーでは過去に本誌が収録した記事を再構成してお届けする。
なお、とくに断りがない限り、本コーナーの時系列は記事製作当時に準拠しており、名称や価格などもそれ自体に歴史的な意義があると判断し、可能な限り記事そのままとしていることをご了解いただきたい。

ヨシムラ・サイクロン

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カスタムシーンには高い知名度と採用率を誇る歴史的なパーツがある。今回は、発売後にリプレイスマフラー界全体に多大なる影響をおよぼした『ヨシムラ・サイクロン』を紹介しよう。

4気筒エンジンの歴史を変えた『集合管』

パーツメーカーとしてはもちろん、1954年の創業以来、つねに国内のレースシーンをリードし、トップコンストラクターとしての地位を守り続けてきた『ヨシムラジャパン』。そんな老舗パーツメーカーともいえるヨシムラが、1980年代のリプレイスマフラーを代表する『ヨシムラ・サイクロン』のルーツとなる『集合管』を初めて製作したのは、今から約50年前。『ポップ吉村』こと故・吉村秀雄氏の手によるものだったという。

当時まだ国内でレース活動をしていたポップ吉村は『4本メガホンより集合管のほうが軽い』というシンプルかつ大胆な発想からマフラーづくりをスタートさせた。もともと四輪のチューンにも精通していた氏は、その経験上、4本のエキゾーストパイプを1本に集合させた場合の、テールパイプの長さとパワー特性の関係を熟知していた。試作段階でもすでに当時の4本メガホンマフラー装着車を圧倒するピークパワーを実現したという。試作車には現ヨシムラジャパン代表の吉村不二雄氏のCB750K0が使用されているが、当時のCBレーサーが90ps(ノーマルは68ps)を発揮したのに対して7〜8psアップの97〜98psを発揮。残念ながらデビュー戦となった1971年のAMA最終戦ではトラブルに見舞われ、あまりいい結果は残せなかったものの、その存在感を強烈にアピール。翌年の1972年のデイトナにはクラウスから2台の集合管付きヨシムラCB750がエントリー。この年もトップを快走しながら最終的にはリタイアに終わるが、それは結果的に、集合管の持つアドバンテージの大きさを証明することになった。

かくして世界初の試みとなった集合管は瞬く間に全米で大ヒット。それを機に、その後はアメリカをベースにレース活動することになったヨシムラが、パーツメーカーとしての確固とした方向性を打ち出したのはちょうどこのころ。吉村不二雄氏がレギュレーション作りに大きく関与した、市販車改造のスーパーバイク・プロダクションレースに参戦し始めたころだった。それは『バイクファンとアフターマーケットのパーツサプライヤーに興味を抱かせるレースであること』というスーパーバイクの理念にもとづいた、モノ作りへのこだわり。ヨシムラならではの『造りと性能へのこだわり』を具現化するものだった。

ヨシムラCB750
ヨシムラCB750

1971年AMA最終戦オンタリオ250マイルにおいて、鮮烈なデビューをかざる世界初の集合管装着車両となったヨシムラCB750。そのパフォーマンスは明らかに他車を圧倒するものだった

独自の理論にもとづき開発された第2の集合管

そんなパーツメーカーとしてのヨシムラのこだわりが随所に見られるパーツの一つが今回紹介する『ヨシムラ・サイクロン』だ。ヨシムラ第2の集合管といわれたこのマフラーは、今でこそヨシムラの生産するすべてのマフラーの総称となっているが、もとはこの当時の4気筒の爆発順序である1→2→3→4の順に円を描くようにエキゾーストパイプを集合させることにより、排気脈動に渦巻き効果を生み出すことで排気効率をアップさせる、という画期的なシステムを採用したマフラーに付けられた名称だった。発売当時はそのパフォーマンスはもちろん、スタイリッシュなデザインから多くのユーザーから支持を集め、爆発的なヒット作となったのだった。

時代のニーズに合わせて進化を遂げたサイクロン

その後、ヨシムラはDuplexサイクロン、DSC、Tri-Ovalサイクロン、キャタライズドサイクロン、GP-FORCEサイクロンと、さまざまなサイクロンシステムを開発。レースでつちかったテクノロジーやノウハウをダイレクトにフィードバックすることにより、パフォーマンス面において目覚ましい進化を遂げながら、その一方では、時代のニーズに合わせて騒音や排ガス問題といった環境面にもいち早く対処している。それらはすべて、ヨシムラのメカニックたちが、地道なトライ&エラーを繰り返し、最良のデータのみを収集。あらゆる使用環境で考え得る、すべてのテストを行なった後に市販されるモノであり、その作り込みに関しては、エキゾーストパイプの曲げの正確さや溶接部分の仕上がりの美しさ、パイプの合わせ部分の造りのよさなど、細部まで徹底的にこだわっているという。

環境を考慮したモノ造り

パフォーマンスアップはもちろん、騒音規制の問題にもいち早く取り組んできたヨシムラが、現在すべてのラインナップに採用しているのがヨシムラDSC(Dynamic Straight Construction)サイレンサー。ヨシムラが独自に開発したこのサイレンサーは、従来の膨張室内に隔壁を設けて排気を反転させて消音するものと異なり、ストレートに排気を行なう方法を取っている。これはヨシムラがレースで使用しているGSX-Rと基本構造は同じであり、そのレーシーなサウンドはもちろん、パフォーマンス的にもレーシングサイレンサーとほぼ同等のパワー曲線を描くほどの高性能ぶりを見せるという。ヨシムラではこのDSCサイレンサーをストリートで使用できるようにするため、さまざまなテストを繰り返し、JMCAが設定する近接排気騒音や、さらに厳しい仮定使用状況近接排気騒音や仮定経年近接排気騒音といった数々の音量規制をクリア。JMCA認定を受けることに成功している。また、最近では排ガス規制に対してヨシムラキャタライズドDSCサイレンサーを開発。従来のDSCの低エミッション化を実現したことにより、従来のDSCと同等のパワースペックと平成12年度排気ガス規制に適合する機能を両立させている。ヨシムラはこうした環境問題にも積極的に取り組んでいるのである。

ヨシムラDSC(Dynamic Straight Construction)サイレンサー

DSCサイレンサー
DSCサイレンサー
DSCサイレンサー

パーツメーカーとしてのサービス体制の強化

また、サイレンサーカバーにはアルミやステンレス、チタン、カーボン、インコネルの5種をラインナップ。機械曲げチタンサイクロンについては、エキゾーストパイプおよびテールパイプに手曲げ専門のスタッフが焼き入れ処理をほどこす『FireSpec』や、スズキワークスチームに採用されて注目を浴びた、サイレンサーの裏側にもエンブレムを装着する『ダブルエンブレム』といったサービスを展開。さらにはレーシングサイクロンを除くすべてのヨシムラジャパン製サイクロンが対象の品質保証(2年)やリメイクサービス、最上級機種のTri-Ovalチタンサイクロン(2エンド)のみ対象とした転倒修理補償といった独自の『YOSHIMURA’S CARE』などのオリジナルサービスも次々と展開している。

そこには先代のポップ吉村の時代から受け継がれる、マフラー製造における『造りと性能へのこだわり』はそのままに、あくまで時代のニーズに合わせて環境を考慮した高性能・高品質の車検対応マフラーを生産するパーツメーカーとしてのプライド、堅実な姿勢が垣間見られるようである。

ヨシムラが生み出した名車たち

ヨシムラ・トルネードF-1

パーツメーカーでありながら国内有数のトップコンストラクターであるヨシムラは、1985年に製作されたGSX-R750ベースの「ヨシムラ・トルネードF-1」に代表されるような、レースでつちかったテクノロジーを市販車にダイレクトにフィードバックさせた完全コンプリートモデルを古くから製作。これまでにも多くの名車と呼ばれるマシンを次々と世に送り出してきた。そんなヨシムラが、その記念すべき創立50周年を迎えるにあたって、これまでの50年間の技術・ポリシーの集大成ともいえる『五感を越えた究極の走機』として、完全手作りで限定生産されたのが、ここで紹介する『ヨシムラ・トルネードIII・零-50(ゼロ・フィフティ)』。その名前の由来は、創業者のポップ吉村こと故・吉村秀雄氏が整備技術を学んだ航空機の名称と、50年という節目を迎えたヨシムラが、来るべき新時代に向けてゼロからスタートするという、強い思いを込めて命名されたものだという。

ヨシムラ隼X-1
GSX-RからベースをGSX1300Rハヤブサにチェンジした『ヨシムラ隼X-1』。乾燥重量200kgを切る軽い車体にマックス193psを発揮するパワーユニットを持つモンスターマシン
ヨシムラカタナ1135R
往年の名車GSX1100Sカタナをベースに、現代のテクノロジー、ノウハウを惜しみなく投入することで、動力性能を大幅に向上させた『ヨシムラカタナ1135R』

※本記事は歴史的なカスタムパーツを紹介することを目的として、過去の本誌連載記事を再編集しています

取材協力ヨシムラジャパン
TEL0570-00-1954
URLhttp://www.yoshimura-jp.com

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