レーサーに使われていることで知られているアンダーカウル。サーキット走行時にエンジンが故障してもオイルが路面に飛散しないよう、オイルを受けるために取り付けられるパーツだ。求められる機能としてはそれが大半だが、デッドウエイトになったり、走行時の抵抗にならないよう、空力特性も重視した設計になっていることがほとんどだ。それだけにドレスアップパーツとしてだけではなく、この2点もしっかり押さえたいポイントだ。
アンダーカウルは純粋なレース用としてだけではなく、1980年代から車両純正オプションパーツとして用意されていたり、純正採用している車種もあるほど、レーシングイメージを強化する定番手法として扱われてきた。そのアンダーカウルを社外品として展開するマジカルレーシングでは、車種専用設計とすることで車両に最適な形状を追求している。車種ごとに最適な形状は異なるし、機能面を考慮しても車種ごとに最適化する必要があるためだ。
とくに形状に関しては、オイルを受ける機能面を重視して長くなりすぎると、タイヤやマフラーとの干渉を招くため、形状の選定には時間を要して試作を重ねている。最低限、純正マフラーなら問題なく装着でき、加減速時にフロントタイヤやリヤタイヤと干渉しない長さを選び、そのなかでさらにシェイプアップを重ねて製作されている。
「マフラーと干渉しないことはもちろん、そのうえでバンク角を犠牲にしないような絞り込みだったり、導風効果が得られるような形状を追求しています。そして絶対的な重量低減が期待できるカーボンを使った製品作り。そういったことをかんがみての車種専用設計でもあるんです」
マジカルレーシングではこのように自社製品作りを解説する。そのうえで、近年ではドレスアップパーツとしてのニーズが高まっていることを受け、最適な形状や質感で作ることを心がけているという。
「カーボンも軽さより織目の美しさに注目される方も多いでしょう。性能だけでなく、見て楽しんでもらえることも重視した製品作りが現在のトレンドともいえるでしょう」
ドレスアップパーツとしてアンダーカウルに着目する人も多いだろうが、走行時の抵抗になってしまっては本末転倒。繰り返しにはなるが、まず空力特性を追求する。装着車両に最適化する。これらを大前提としたうえで、愛車に最適なアンダーカウルを選ぶようにしたい。
レースユースを想定したマジカルレーシングのアンダーカウル
古くからレース用として製作・使用されてきたアンダーカウル。1990年代のNK4レース(CB400SFやバンディット400といった400㏄ネイキッドモデルによるレース)の一時的な流行から社外品への要望が高まったのを機に、マジカルレーシングもストリート用として転用できるアンダーカウルを手がけるようになった。写真はその当時のレース用。オイル受け機能を最重視した設計が見て取れる。
車両ごとに異なるデザインワークも存在する
ストリート用の車両にはサイドスタンドが必須で、そのためアンダーカウルにもオイルを貯める形状を持たせつつサイドスタンドの逃げが必要だ。このスタンド位置だが、たとえば”CB400SF”と呼ばれる車種なら全年式が同じ位置なのではなく、微妙に異なることもある。そのため購入時にはアンダーカウルの対応年式と車両の年式を確認したい。とりわけカーボンは非常に硬く、個人で形状を修正するのが困難。同社では一部の修正なら対応している。
取り付けは基本中の基本から確認しよう
マジカルレーシングのアンダーカウルはボルトオンパーツとして車種専用設計されているため、製品として大きなズレは存在しない。しかし、それも正しく装着すれば、の話だ。同社製に限らず、社外パーツはまず仮組みして正しい位置関係を導き出し、それから締結すべき。これを怠ればどんなパーツも破損する可能性大だ。マジカルレーシング以外だとアンダーカウルは汎用品として位置付けられることも多いが、車種専用品でも汎用品でも取り付けに細心の注意を払うのは一緒だ。
四ッ井 和彰
元・本誌副編集長。バイク業界歴は10数年。現地取材、撮影、原稿執筆まで一貫して一人で行なうことが多いワンマンアーミー。現在はwebカスタムピープルなどクレタ運営のバイク系ウェブサイト4誌分の記事製作を担当中
※本記事はカスタムピープル153号(2016年3月号)掲載記事を再編集したものとなります