走行時にタイヤが跳ね上げる泥や小石、水といったものから車体をガードするために考え出されたフェンダー。だが、現代のバイクにおいて、フェンダーの役目はそういった保護機能だけに留まらない。レースの世界ではハンドリングに影響を与える空力パーツとして、またカスタムマシンにとってはスタイリングを引き締めるワンポイントとして欠かせない存在だ。では、どんな観点から選べばいいのだろうか?
「フェンダーのカスタムパーツとしてのメリットは、まずはアピアランスですよね。気軽に購入できる価格帯ながら、マシンのイメージを大きく変えることができます。そう考えると、フェンダー交換のコストパフォーマンスは高いですよね。ストライカーのフェンダーも、ビジュアルを第一に考えてデザインしています」
そう語るのはパーツブランドのストライカーを展開するカラーズインターナショナル代表の新 辰朗氏。マフラーやステップが高い支持を集めているストライカーだが、近年は外装パーツの開発にも乗り出し、好評を博している。冒頭で「ビジュアルが第一」と語るものの、レーサー出身の新氏らしく、機能面へのこだわりもみせる。
「フェンダーは機能部品なんです。GP500を走っていたころに、いろいろな形状を試したことがあるのですが、形状によってハンドリングに違いが出てきました。ただ、これはレーシングスピードの世界での話ではあります。ストリートでリーガルに走る限り、よほど極端な形状でもなければハンドリングへの影響は出ないと考えていいでしょう」
ストライカーが抱くデザインへのこだわり
ストライカーが外装パーツを手がけるようになったのは「こんなパーツが欲しい」というユーザーからの要望がキッカケ。当然、そのなかには、今現在発売されているモノより、もっとカッコよくしたいという声も含まれているので、デザインには徹底的にこだわっている。車種別専用設計というコストのかかる方法を選び、マシンのフォルムに合わせたディティールを追求して作られているのだ。そして社外フェンダーの魅力はデザインの面だけでなく、素材も重要なファクター。人気の高いカーボンは繊維の織り目模様が独特の質感をかもし出し、上質なイメージを演出する。
好みのデザインを選べば問題ないということだが、製品の強度や剛性には注意してほしいとのこと。
「剛性が足りない製品の場合、走行時に風圧に負けて変形してしまう場合があります。そうするとタイヤと接触する不具合が発生し、危険を招くことも。その点、純正フェンダーはかなり強く作られています。ただし、その分すごく重くなってしまっているんですね。しっかりと作られた社外品フェンダーは、軽量で強度も高い。剛性や強度は外見からはわかりませんから、信頼できるブランドの製品を使用してほしいですね」
製品のクオリティはファッション性だけでなく、安全面にも関わってくる。また、素材が柔軟性を持つ樹脂製が多いため、多少サイズがズレていても取り付けできる場合もあるが、これも勧められない。たとえばフロントフェンダーの場合、サイズの合わないものを無理に装着すると、フェンダーがフロントフォークを歪ませて、動きを阻害することすらあるのだ。フェンダーは機能部品という意識を持って選ぶべきなのだ。しっかりとした製品を選びたい。
ホイールサイズの違いによるフェンダーの違い
次の写真は、18インチを純正採用しているゼファー1100のフロントホイールを17インチ化したもの。[18インチ用]とある写真は18インチ用のフロントフェンダーを使用した状態で、見てのとおりタイヤとのクリアランスが不必要に大きくなる。[17インチ用]とある方は17インチ用のフロントフェンダーを装着したもので、クリアランスが適正化されてスタイリッシュなまとまりを見せている。1インチの差は想像以上に大きいので、ホイールサイズを変更した場合はフェンダーも変えるべきだろう。
換装時の注意点
フェンダー交換作業時、もっとも注意が必要なのは、タイヤやブレーキホースなど周囲の部品との干渉だ。とくにタイヤは要注意。接触すると異常な摩耗を招くし、最悪、フェンダーを巻き込んでタイヤをロックさせる可能性もある。ブレーキまわりはホースとの干渉にも注意したい。
淺倉恵介
フリーランスライター&エディター
※本記事はカスタムピープル153号(2016年3月号)掲載記事を再編集したものとなります