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メーカーの理念と美学が詰まった、逸品モノを紹介

DUNLOP TT100GP RADIAL インプレッション

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ダンロップのTT100GPラジアルは、かつてのTT100のビンテージイメージをラジアルタイヤに反映させただけでなく、伝統的な乗り味とラジアルタイヤのよさを見事に融合させていた。

ビンテージイメージのラジアルの走り味は新鮮ですらある

ダンロップのTT100はかつてマン島TTで優勝した実績もあるレジェンドタイヤだ。また、スリック化前夜の125㏄レーサーにも使われ、多くのロードスポーツモデルに標準装着されてきた。近年はそれを今日的に再現したTT100GPというネオクラシカルタイヤが注目を浴びており、さらにラジアル化したTT100GPラジアルが登場している。このTT100GPラジアルの乗り味を試したのだが、結論を先に言うと、乗り味が鮮烈かつ新鮮であることが大変印象的だ。新しいカテゴリーを切り開いていると言って差し支えない。

では、何がどのように、なぜ新鮮なのか。そのことを理解するには、タイヤのバイアス構造とラジアル構造の違いについて知っておきたい。30〜40度の角度でカーカスを互い違いに重ね、場合によってはブレーカーで補強するのがバイアス構造。一方のラジアル構造は、カーカスは真横方向、つまり90度、ラジアル状にコードが配される。そのままでは剛性不足なので、トレッドはベルトという補強材(角度は15〜20度、JLB構造だと0度)でガチっと固められる。そのため、タイヤ全体がたわむことで車両の状態を教えてくれるバイアスに対し、ラジアルは固められたトレッドが安定したグリップ力を伝えながら、柔軟なサイドウォールのたわみ(これがいわゆるつぶれ感だ)が豊かな情報を提供してくれる。これにより高水準のコーナリングが実現される。

DUNLOP TT100GP RADIAL インプレッション

となると、このTT100GPラジアルはレジェント品を今日的に高次元化していることになるが、それだけでこの乗り味は説明できない。かつてのバイアスタイヤはトレッドの溝が多く、トレッドゴムが動くことによるタイヤの情報も豊かであった。トレッドパターンがブロック状といえるほどのかつてのTT100のよさは、その点にもあったと思う。ならば、かつてのパターンのままラジアル化すればいいようだが、それではベルトで固められたトレッド部に対し、トレッドゴムだけが節操なく動くことになってしまう。そこでTT100GPラジアルでは、トレッドパターンをかつてのイメージのまま、ラジアル向きにアレンジ。トレッドゴムの動きを最適化することで、これまでにない走り味が具現化されたというわけだ。

DUNLOP TT100GP RADIAL インプレッション

昨今の高性能ラジアルの乗り味がいい意味でも悪い意味でもソリッドだとしたら、このTT100GPラジアルでは路面と接している部分からの様子が鮮烈に届く。走りが楽しくなると言っていい。それでいて、コーナー立ち上がりではラジアルらしくリヤはサイドウォールが撓んで、情報を豊かにトラクションと荷重を受け止めてくれる。今回の試乗車であるビトーR&Dのコンプリートマシン、Z1000は、かつてのZ1000のよさをそのままに今日的に違和感なく楽しめるようカスタマイジングされたマシンだ。その意味で、TT100GPラジアルとの相性は最高である。かつてのバイアスタイヤが備えていた美点が今日的なラジアルタイヤの中に再現されているからである。


TT100GPラジアル タイヤ解説

注目を集めているTT100GPが、ワイドラジアルとして生まれ変わった。現行ロードスポーツに適合するだけでなく、トラディショナルモデルに装着できる前後18インチ仕様も用意される。今回はこの18インチに試乗した。フロントはラジアル構造ながら、サイドウォール部に補強材を設けたAPEX構造で、ベルトは角度を設けた2枚が重ねられる。リヤは、フルラジアルのAPEXレスで、ベルトは角度0度のジョイントレス構造である。

DUNLOP TT100GP RADIAL フロントタイヤ
DUNLOP TT100GP RADIAL リヤタイヤ

TT100GPの伝統的なパターンをラジアルタイヤ向きに剛性バランスをチューニングし最適化。前後18インチのビトーZ1000のビンテージイメージにも溶け込んでいる
DUNLOP TT100GP RADIAL
パターンはラジアルタイヤ向きの溝形状と断面角度を持つ。最新技術のコンパウンドにはシリカと融合性の高い新ポリマーを採用。低温時やウェット時のグリップも高い
TT100GP Radial 製品詳細ページ

DUNLOP TT100GP RADIAL


ビトーR&D Z1000 マシン解説

試乗に使った空冷Z1000をベースとするビトーR&Dのコンプリートマシン。ビトーR&Dのオリジナルパーツがエンジン車体の多くに投入され、基本車から大きく生まれ変わっている。だが、特筆すべきは、かつての基本車の持ち味を損なうことは一切なく、今日的に楽しめるマシンに変貌していることである。最新技術で開発されたパーツ群が独り歩きすることなく、かつての車輛性格の中に溶け込んでいるのである。

取材協力/ビトーR&D

 0796-27-0429  http://www.jb-power.co.jp


TT100GP Radial 製品詳細ページ

DUNLOP TT100GP RADIAL

和歌山利宏
インプレッションライダー
和歌山利宏

かつてバイクメーカーでテストライダーを務めたときはZ1000のライバル機種にも関わり、その後、タイヤメーカーでテストライダーとして開発に携わった頃はラジアルタイヤの創成期。何気に当時を思い出す試乗だった。

問い合わせ住友ゴム工業
TEL0120-39-2788
URLhttps://dunlop-motorcycletyres.com/


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