コーティングのなかで、カスタムシーンにおける認知度は比較的高いパウダーコート。それまで一般的だったウレタン塗料に比べるとメリットが多いこともその要因と考えられるが、ここであらためてパウダーコートについて触れてみよう。
大切なパーツを保護しながら差別化をねらえる塗装の一種
カスタム好きであれば塗装の一つとして“パウダーコート”という単語を知っている人は多いことだろう。実はこのパウダーコートはガードレールをはじめ、さまざまな場面に使われている塗装方法の一つである。これまでに数多くバイク用パーツにパウダーコートを施工してきたカドワキコーティングの堀内氏に、その特徴をうかがってみた。
「パウダーコートとは粉状の塗料を静電気の力を利用して付着させ、180〜200度の高温で焼き付ける塗装です。粉体塗料は焼き付けることで溶けて固まり、高分子ポリマーの結合によって強靭な塗膜になります。
この塗膜は耐久性・耐候性にすぐれているため工業製品の塗装として広く用いられているんです。実際に親会社のカドワキカラーワークスでは信号機やコインパーキングの精算機、建築物の外壁の塗装なども行なっています。また有機溶剤を一切使用しないので、環境にやさしいというメリットもあるのです」
パウダーコートを手がける業者は数多いが、同社はパウダーコートのパイオニア。従来、パウダーコートは色数やマスキング、仕上がりなどの問題で、工業製品向けだった。長年の実績に加え、創意工夫と試行錯誤による研究を続け、豊富な色数・エフェクト・仕上げの美しさを構築。また不可能とされていた塗り分けやロゴ入れなどの技術を開発したことにより、バイクカスタムという分野にパウダーコートを普及させてきたのである。
「当社が施工したフレームやホイールは、仕上がりが美しく、深みのある色に仕上がると高い評価を得ています。その背景にあるのは下地作り。ここにどれだけ手間をかけるかで仕上がりに雲泥の差が出てしまうものなのです。当社では2段階のブラスト(樹脂メディア/アルミナ)を使用し、丹念に下地を整えます。1段階目の樹脂メディアで母材を痛めることなく塗膜を剥がし、2段階目のアルミナで腐食を除去しながら滑らかな下地を作り出すのです」
ちなみに腐食の度合いによってはフレームのブラストで8時間ほど費やすこともあるという。また、パウダーコートは通常、色のみの1コートが一般的だが、同社では“下塗り”“色”“クリア”の3層すべてをパウダーコートで仕上げていく。クリアを塗ることによってロゴを入れたり、塗り分けが可能になり、加えて耐溶剤性に強い塗膜に仕上げることができるという。さらにツヤありだけでなく、マット・セミマット仕上げ・パール・メタリック・クローム調・キャンディなども施工可能。既存色のなかから色を選ぶのだが、色数が驚くほど豊富にそろっているのは、ユーザーにはありがたい。
「もう手に入らない貴重なパーツをパウダーコートすることは、パーツを守ることにもつながります。それに加えて美しい仕上がりを提供したい。そのため当社は、時間を惜しまず丹念に作業しているのです」