人気車種別カスタムの道しるべ

カスタムを進めていくうえで、押さえておきたいポイントは多数ある。そのポイントは車種を問わない共通の内容ばかりではなく、その対象車種ならではのポイントもある。ここではカスタムベース車として人気の高いモデルをピックアップし、その車両を得意とするプロフェッショナルに、カスタムの方向性を聞いてみた。

車種別カスタム:ゼファーシリーズ(ムーンフィールド編)

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現在のビッグネイキッドカスタムシーンをけん引する一方の雄、ゼファーシリーズ。初登場から20年以上が経過する今、経年劣化もかなり進行した。カスタムする上では整備もしっかり行なうべき車種となったことをまずは自覚したい。ムーンフィールドにポイントを聞いた。

※ここで収録する記事は基本的に過去の本誌で紹介した記事を再編集した内容となります。あらかじめご承知おきください

数少ない弱点はメーカーが対策ずみ

1989年、それまでのレーサーレプリカブームに一石を投じる形で市場に投入されたゼファー。その後、市場で爆発的な人気を博し、ゼファー1100、750とラインナップが拡充してきた人気車種だ。とくに絶版車になってから人気は高騰しているが、この20年以上は一定以上の人気を博してきたモデルだけに、とくにこれといったトラブルや持病を抱え続けているわけではない。数多くのゼファーシリーズを手がけてきたムーンフィールド・月野 拓代表も、とくに弱点らしい弱点は数えるほどだと話す。

ではその弱点だが、ゼファー1100の初期型と逆輸入車だとミッションの2速が抜けやすく、ゼファー750だとクラッチが滑りやすくなる症状が固有のトラブルとして挙げられることが多い。ただ、これらは最後期型ではすべて対策ずみなので、2004年式以降の純正パーツに交換すれば対処は可能だ。ゆえにゼファーだからここが壊れる、ゼファーだからここをカスタムしてフォローしてあげなければならない、といった点はほぼ存在していない。

新品や社外製パーツを活用しつつ適切な整備を行なうべき

「あとはゼファー(400)と1100はキャブレターがオーバーフローしやすい傾向が強いですね。これも多いトラブルです。ただ、今から純正キャブレターをオーバーホールして使い続けるのは、実はあまり賛成しかねます。スロットルボディ内部の摩耗が進行していることも多いので、できれば新品、あるいは新品の社外品へ交換したほうが安心感が高いでしょう」

幸いなことにゼファーシリーズはカスタムシーンで人気で、カスタムパーツも豊富。そのため純正に強いこだわりがある人はともかく、使い勝手やのちのちのことを考えると、社外品への交換も視野に入れたいとのこと。とりわけサスベシンョンまわりは社外品のほうがアフターフォローが容易なケースも多いためだ。

「そもそもの問題として、ゼファーシリーズでトラブルがあったと相談を受ける際には、経年劣化や整備不足による故障が多いですからね。さすがに最初期型から考えると生産開始から20年以上は経過したモノばかり。そのため中古車を購入された方は購入直後に、乗り続けている人なら今からでも定期的にしっかり整備してあげてください。整備・修理ついでにカスタムを進めるのもアリですし、そういう方も実際多いですからね。もともとトラブルは少ない車種なのは間違いありません。ですから、適切に整備することで今後も長く乗れるようになりますよ」

先に1100と400はキャブレターのオーバーフローが持病の一つと挙げたが、ユーザー自身が整備した結果、故障してしまっているケースも目立つそうだ。とくに純正キャブレターのフロート位置を調節しようとして曲げすぎてしまい、その結果オーバーフローを誘発するケースはあとを絶たないという。だから“適切な整備”を行なうべきなのだ。

「取り寄せた純正新品をそのまま使ってくれればいいのですが、半端な知識で調整しようとして壊す、というケースも多いんです。できれば整備はプロショップにお任せいただきたいところです」

オーバーフローの予兆は、寒いのにチョークを使わずセル一発で始動できる状態だと黄色信号。悪化すると、400だとエンジンがストールしやすくなる。1100だとエンジン内にガソリンが流れ込んでエンジンオイルを希釈させてしまう、ということもあるとのこと。ぜひご注意を。

ゼファーシリーズも基本設計はかなりしっかりしているが、さすがに全体的に古くなってきたのも事実。そのため正しい知識で定期的に整備を行なうことで各部をリフレッシュし、トラブルの予防につなげることをまず考えてほしい。月野代表はそのように強調するのだった。

ゼファー400/ゼファー1100 純正キャブレター
400と1100は純正キャブレターがオーバーフローしやすいのが持病といえる。ただし、それを直そうと分解し、フロートを曲げすぎて悪化させてしまうケースも多いそうなので、自分で調整できる実力がなかったり不安があるのなら、信頼できるプロショップに相談してほしいとのこと

意外なほど丈夫なゼファーシリーズ

1989年登場以降、90年代に兄弟車が続々と登場したゼファーシリーズ。車体まわりはオーソドックスなダブルクレードル、エンジンは基本的に過去モデルをベースとしていて、言い方は悪いかもしれないが、いわゆる既存の技術の粋でもあり、それゆえに信頼性が非常に高いのが特徴でもある。車種特有のトラブルはメーカーが随時対処しているので、最後期型、あるいはファイナルエディションが入手できるのなら、それを購入しておけば、あとは経年劣化に注意すればいい。経年劣化は必ず訪れるので、定期的なチェックが必須だ。

ZEPHYR
ZEPHYR
ZEPHYR750
ZEPHYR750
ZEPHYR1100
ZEPHYR1100

いずれのシリーズモデルも2008年の販売終了後に人気が高騰化し、中古市場でも大人気。それに比例して流通在庫の程度は悪化する一方だ。熟成した技術の粋なので丈夫ではあるが、経年劣化は防げないので購入時は高年式車を選びたい

カスタムポイント

①スポーツ走行向けにもバンク角確保が有効

1100と750に関しては先にも触れたように内部パーツに弱点があるので注意したい。なお、実際の運用面で1100オーナーはスポーツ走行を楽しむ人が増えているが、バンク角のなさを相談されることが多いそうだ。これはトラブルとまでは言えないが、バンク角不足は弱点ともいえる。バンク角不足解消のためにはセンターコレクトタイプのマフラーや同社がリリースするクラッチカバーなどを採用することもお勧めとのこと。

②ヘタった足まわり改善には社外品導入が近道

1100ではフロント18インチの重々しいハンドリングに対して改善を求める声も多いそうだ。「ただ、これはフロント18インチが原因というより、純正フロントフォークやリヤショックがヘタっているケースも多いですね。そのためシリーズ共通で社外品への交換をお勧めしています」。1100に関してはフロント18インチの17インチ化を手がけるケースが多く、スポーツライディングを指向するユーザーにとって、社外ホイール換装はもはや定番だ。

③1100のみサイドカバーが割れやすい点に注意

外装に関しては1100以外は構造上、壊れやすいというパートは存在しない。もちろん古くなるとサイドカバーのツメが割れやすくなったり、テールカウルの締結部が割れることもあるが、これはどんな車種にも訪れる経年劣化の結果だ。なお、昨今は純正外装を維持したいという声も多くなったが、できるなら早めに新品を確保しておきたい。絶版車はある日突然、パーツの在庫がなくなるからだ。

取材協力ムーンフィールド
住所東京都江東区亀戸1-43-7
TEL03-5628-3420
URLhttp://www.moon-field.net


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