メンテナンスのススメ

カスタムすることで性能を向上させる。それがカスタムする楽しみの一つでもあるが、それも正常な状態あってこそ。そして正常な状態を維持するには、純正のままでもカスタムした状態でも、各部のメンテナンスは必要なのだ。そこで性能を引き出すうえで注目したいメンテナンスポイントを挙げていこう

グリスアップのススメ

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純正部品よりも高性能であることが多いためか、純正よりも丈夫で壊れないというイメージが持たれやすいカスタムパーツ。しかし、純正同様に定期的なメンテナンスが必要だ。とくに可動域へのグリスアップは絶対に必須。では、どんな場所に、どんなグリス類だといいのだろうか?

ポイントは可動部だけではなく固着すれば困るところも注意点だ

おそらくほとんどのライダーにとって“グリスアップするパート”などと書くと、まず最初に思い浮かぶのはドライブチェーンだろう。ある程度自分でメンテナンスできる人なら、ワイヤーインジェクターを用いたケーブル類のグリスアップを思い浮かべるかもしれない。いずれにしても、あるいはそれ以外の場所を思い浮かべるにしても、まずは動くパーツを連想する人が多いことだろう。

しかし、グリスアップが必要になるのは可動部分以外にも多い。

では、それはどんな場所か? 固着すると困る場所がそれに該当する。たとえばバックミラーのネジや、マルチポジションのステップならステッププレートのマウント用ネジなどだ。ここがサビなどで固着すると間違いなく、のちのち困ってしまうことになる。そこでネジ山にグリスアップすることもまた、重要になるのだ。

それに、可動部分もただグリスアップすればいいわけではない。その部分が高熱にさらされるのか、圧力がかかるのか、水がかかりやすいのか。場所によってさらされる状況が異なるわけで、それに合わせてグリスを使い分けるのがベスト。そのためにはマルチパーパス(万能)グリス1種類だけですべてをカバーすることはできないので、用途ごとにグリスを用意する必要もあるのだ。

そのグリスアップだが、基本的にグリスは厚塗りするとゴミやホコリを吸着しやすくなる。場所にもよるが全体的に薄めに塗ることを心がけるようにしよう。

ドライブチェーン

オイル&グリスアップが必要なパーツとして、もっともポピュラーな存在といえるのがドライブチェーン。実際の作業も至って簡単。後輪を回転させながらチェーンクリーナーで全体をクリーニングし、キレイになったら同様に後輪を回転させながらチェーンオイルを吹きつけるだけだ。

ケーブル&レバー

ブレーキ&クラッチケーブルやレバーなどの操作系パーツも定番のグリスアップポイント。新品のレバーでも支点とタイコ部分をグリスアップすると摩耗を防ぐうえで有効だ。ただし、ハンドルとスロットルチューブの間にグリスを入れる人も多いが、その後に放置しているとグリスにホコリが付着して動きが悪くなることもあるため、人によってはあまりオススメされない。

固着を防止するグリスアップとは?

グリスアップというと可動部分の動きを滑らかにするというイメージが強いが、実は締結部分の固着を防ぐために行なわれることも少なくない。露出したネジやボルトが多いバイクはとくに固着しやすい部分が多いので、油膜により腐食を防ぎ、表面を保護することも重要になるというわけだ。

アクスルシャフト

走行中つねに応力がかかっているパーツだけに、グリスアップはマメにやっておきたいのがアクスルシャフトだ。しっかりとグリスを塗布しておかないとサビたり固着することもある。アクスルシャフトが抜けなくなると大変なので、ひんぱんに分解整備する人はともかくも、できるだけ定期的に古いグリスを拭き取ってグリスアップしよう。使用するグリスはマルチパーパス系でOKだ。

それ以外のポイント

代表的なポイントを挙げてきたが、それら以外にもグリスアップしておきたいポイントは存在する。以下のポイントも注目しておこう。

用途別に使い分けるグリスとは

グリスとはたった1種類だけが発売されているわけではなく、いわゆる万能グリスとして知られるマルチパーパスグリス(リチウムグリス)、シャーシグリス、モリブデンを配合したモリブデングリス、シリコングリスなどが存在する。

グリスの種類に関する解説は省略するが、バイクの大部分はマルチパーパスグリスがあればほとんどの部分をカバーできるので、まずはマルチパーパスグリスを常備することからスタートしよう。続いて極圧・高負荷用にモリブデングリス、ゴムを侵さないシリコングリス、焼き付きやカジリ防止を重視してスレッドコンパウンド、といった具合に自分が主に整備するパートや用途別のグリスを用意するといいだろう。

それぞれの種類ごとにさまざまな製品があるが、今回は取材先のプロショップで使用していた製品をピックアップして紹介する。それぞれの得意分野や用途を考慮し、最適なグリスを最適な場所に使用していだきたい。

なお繰り返しになるが、グリスは量が多ければ効果を長く発揮したり、より効果が高まるということはない。必要な場所に必要な量を塗れば十分であり、必要以上になると逆に動きを阻害したり、ゴミを呼び込んで摩耗を促進させたりサビを進行させてしまうこともあり得るので注意も必要だ。

また、グリスは成分が揮発したり、摩擦や圧力、あるいはゴミの付着などによってグリスとしての性能が徐々に低下していく。カスタムパーツに通じる話だが、高価な製品だと安価な製品の何倍も耐用年数があるわけではない。高くても安くても、古くなったグリスは定期的に除去して新しいグリスを塗布する。そうすることでパーツの寿命は延びていくことをご理解いただき、愛車を長く乗れるように定期的なグリスアップを心がけていただきたいところだ。



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