車体の中心近くにレイアウトされるモノショックは、交換時に狭い場所へのアクセスを強いられることが多い。必然的に車体の外側に位置するツインショックより交換の難易度が上がってしまうパーツなのだ。
所要時間:120分〜
モノショックの取り付け方法自体は単純。しかし万全な準備と慎重な作業を伴う
車体外側に位置するツインショックと異なり、モノショックの交換は作業の難易度が非常に高い。ほとんどの場合、モノショックはエンジンの真後ろなど車体中央付近にレイアウトされるため、リヤタイヤやスイングアームと干渉しかねないためだ。
「場合によってはスイングアームやホイールの着脱を余儀なくされるため、車体を安定させるためには上から車体を吊るか、ピボットを横から押さえるかのどちらかを推奨します。いずれにしても車体を安定させないと危険を招きます」
取材に協力いただいたナイトロンジャパン・井上浩伸代表は万全を期した準備の必要性を語る。そのうえでリンク式ならリンクまわりのメンテナンスも推奨したいとのこと。
「交換したい動機が『リヤの動きが渋い』場合、リンクまわりが固着していた、ということもあります。ショックの性能をフルに引き出すのはメンテナンスあってこそ。リンクまわりの状態もチェックしておくと、今後も安心して乗れるでしょう」
モノショックの交換前に用意するモノ
必要な工具は車両によって異なることも多いのだが、モノショックは締結ボルトに12・14mmを使用することが多い。そのため最低限、12・14mmに対応するレンチを用意すること。また締結するポイントは車体の奥まった場所になるため、エクステンションや首振りタイプのソケット、ラチェットも準備したい。とりわけ取り外し時には高トルクがかかっていることが多いので、サイズは1/4sq.よりも3/8sq.が無難だ。
締結はネジとボルトなので、一方から押さえなければ空転してしまう。そのため12mmの工具は1つだけではなく、押さえ用・回し用と2セット用意したいところだ
テクニクスが取り扱うピボット固定用のハンガー。個人で購入するにはやや高額だが、交換時に使えば車体を前後いずれにも、ほぼ直角まで安全に傾けられる
純正のモノショックを取り外す
モノショックの交換でもっとも厄介なのがショックを車体から取り外し、かつ狭い場所から取り出すこと。これは車種で難易度がかなり変わるため、事前にサービスマニュアルなどを熟読しておこう。
上で紹介したハンガーで車体を固定する。ピボットの左右からはさみ込むため、車体の安定度は下からジャッキで支えるのとは段違いだ。汎用性が高いので広範な車両に使える
交換作業は2名以上で行ないたい。左右からネジやボルトを押さえたり、狭い場所にショックを入れる際、リヤタイヤやスイングアームを動かすと楽なケースが多いからだ
GSX-S1000Fは写真のようにリンクの一部を外し、ショックをズラして取り外す。この際、慎重に扱わないとショックはキズだらけに…。装着時も同じことがいえる
社外品のモノショックを装着する
モノショックはプリロードアジャスターやリザーバータンク付きが好まれがちだ。ただ、アジャスターやリザーバータンクは車体外側に装着されているため取り付けが簡単と思われるが、ショックのある空間を経由して内→外に配置することが多いので取り付け時には接触に注意しよう。
パッケージを開けると、ショック本体とカラー類、ステーが付属している。これとは別にマニュアルもあり、各部調整機能についての説明もある。装着前後に必ず内容を一読したい
[POINT]外す機会が少ないからこそチェック
バイクにとってアクセスしにくい場所の一つが、車体下の内側に存在するリヤショックのリンクまわりだ。分解する機会は少ないが、リヤショックの動きを左右するパートだけに、交換時に状態を確認しよう。ベアリングやカラーが劣化していれば要交換だ
狭い場所へのアクセスが必須なので、装着前に各部をしっかり養生したい。写真に見えるネットは出荷時に装着されているカバーを流用しているが、ウエス類でも代用可能。とにかく、しっかりとガードすること
車体へ取り付ける前にショック上下にはラバーリングを介してカラーを装着する。昔はグリスで仮どめしたものだが、近年のモノは圧着性が高まっていて装着時に取れる心配は減っているそうだ
ほとんどの場合、車体下部からショックを車体内側に入れることになるが、まずリザーバータンクなどを先に入れる。周囲と干渉しないよう注意を払いながら作業しよう
タンク類を外側に出したら続いてショック本体を入れる。今回は写真のようにリンクは完全に取り外していないが、これはケースバイケースで取り外すこともある
[POINT]できれば二人三脚で作業したい
ショックは外すとスイングアームが下がり、リンク周辺が狭くなるのでアクセス性が悪化する。その対策として1人がタイヤを持ち上げながら作業するとスムーズな取り付けが可能になるのだ。タイヤ下にジャッキを用意するのも手だ。
先にカラー類は圧着されると書いたが過信は禁物。とくに車体側にはコの字のステーに入れる形が多いので、装着時には取れないよう、手で押さえてステーに入れる
ショック上部を仮どめしてからリンク部分を組み立てる。取り外しの際に意外なほどトルクがかかっていることもあるが、締結トルクは意外と低い。サービスマニュアルの指定厳守で締結する
最後にショックを本締めし、タンクやアジャスター用ステーを取り付ければ作業は完了だ。ショックを入れる際に慎重な作業が求められるが、プロなら1時間弱で終了
モノショック装着後のセッティング
本誌でも再三触れている話だが、ショックとは装着すればただちにフルに性能を発揮できるわけではない。そのため必ずサグ出しなどの初期セッティングと、実走してからの再調整を行ないたい。
以前紹介したツインショック同様、同社取り扱いのモツール社製デジタルサグスケールを装着し、1‘G(乗車)時のストローク量を測定する。まず1G(無乗車)状態で車体に装着
リヤを計測する場合にはリヤを、フロント側の場合はフロントを浮かした0G状態を基準値として登録。リヤ側はサイドスタンドを利用すれば一人で対処可能だ
続いて乗車し、およそ25〜30mmのストローク量になるようプリロードを調整する。この状態を基準に実走して、細部を調整していくと理想に近づきやすくなる