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ペイントは焦らずじっくりと構えることがポイント
自宅でできるDIYカスタムのうち、もっとも愛車の雰囲気を変更できるのがペイントだ。わずか一部だけであっても純正車両とは異なるカラーリングとなれば、個性出しや差別化に大きく影響する。たとえばカーボンパーツを導入したり、チタン製パーツに交換するのとは異なり、コストを大きく抑えつつ、全体の雰囲気刷新も可能だ。
現在、塗料そのものも頑強な塗膜が得られるウレタン系が市販品として(場合によってはホームセンターでも)入手可能。かつてのようにアクリル系かラッカー系か、といった二択ではなくなっているので、好みで選んでもいいだろう。
ちなみにアクリル系、ラッカー系、ウレタン系の違いだが、アクリル系は発色がよく重ね塗りしやすいのが特徴。ラッカー系は塗膜が厚くて耐久性があるが重ね塗りはできない(強いので下塗りを侵食する恐れあり)、ウレタン系は塗膜が厚くて丈夫だが乾燥時間が長い、といった具合に長所と欠点をそれぞれ備えている。
使用上の一番の注意点だが、塗装の種類はできるだけ混在させないこと。とくにラッカー系やウレタン系は強い塗料でもあるので、アクリル系との相性がよくない。アクリル系を使うなら極力サフェーサーからクリアまで一貫してアクリル系を使用したほうが無難だ。
なお、バイク用塗料としてメジャーなのはラッカー系とウレタン系で、現在だとウレタン系が主流だ。
さて、ペイントするにあたっての注意点に触れていきたいが、順序としては①下地作り ②下塗り ③本塗り ④クリア ⑤仕上げという行程を経ることになる。それぞれに注意点はあるが、共通して言えることは丁寧に作業すること。そしてあせらず余裕をもって作業することだ。
丁寧というのはバフ掛けやステッカーでも同じように触れているが、カスタムのあらゆる作業に共通する話。たとえば下地作りで適当に仕上げたところ表面に凹凸があったり、妙なキズが残ったままだと、仕上がりに大きく影響を与える。下塗りも手を抜くと本塗りの光沢を損ねることもある。クリアも注意していないとゴミが付着してしまうことも。
また余裕を持つというのは時間管理にも言えること。ペイントとは塗料が乾いてから次の行程に進むので、この乾燥する時間をしっかりキープすることを重視しよう。『もう表面が乾いたみたいだし、もう次に進んでもいいか』は基本NG。できるなら丸一日は自然乾燥させるため放置する、くらいの心構えでもいいくらいだ。何事も焦っていいことは起こらないので、完成を急ぎたい気持ちがあっても落ち着いた作業こそが、のちのちの完成度の高さにつながるのだ。
ペイントというと機材や塗料の種類といったハード面、あるいは施工者のスキルといったソフト面に注意が向きがちだが、プロでも(いやプロだからこそ)下準備には余念がなく、その準備をどれだけしっかり行なうのかが最終的な仕上がりの違いともいえるのだ。
事前に用意したい塗料以外の用品類
ペイントといえば塗料が入った缶スプレーさえ購入すれば完結できるわけではない。いや完結させようと思えば可能だが、より美しい表面を得たいなら不十分だ。そこで、より完成度を高めるために用意しておきたい用品類をここでは挙げる。いずれも安価だが、なければその場での代用が効かないモノばかり。行ないたい作業がストップすることもあるので、ぜひ忘れず用意しておこう。
適した環境づくりも大事だ
塗料には使用条件が記載されていることが多い。たとえば”気温20度・湿度65%”と明記されていれば、その条件をできるだけ満たす環境を整えたい。暑すぎず、寒すぎず、質と度の高くない春/秋の日中がペイントするには最適な時期なのだ
実際の注意点は? 実録した作業からひも解く、DIYペイントのコツ
ここでは過去に本誌で取り上げたペイント特集のなかから実作業の注意点に触れていく。缶スプレーでも正しい使い方を行なえば、プロの施工に肉薄することもできるのだ。
下地作り
塗装の仕上がりを大きく左右する下地作り。油分など塗料の密着性を損なう要素を取り除き、逆に塗料を密着させやすくするための準備となる。またキズなどの修正を行なうパートだ。
下塗り
素材にもよるが、素材が暗いモノの場合、明るい色を塗ろうとすると下から暗い色が浮き出てくる。その浮き出しを抑える作業が下塗りだ。なおサフェーサーもあれば使った方が色を抑えやすいが、なければ白でも代用可。
本塗装
やっと塗装の本番に移る。ここまで長々と準備をしてきたが、塗装はそういった準備に時間と手間がかかるということがわかっていただけたかと思う。“準備9割、本番1割”の世界なのだ。ではここまでの下塗りでつかんだ感覚をもとに、本塗りに挑戦してみよう。
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ペイントは後戻りできない作業だとも肝に銘じておこう
ペイントは後戻りできないという欠点があるのもよく承知しておこう。“これは失敗したかな”と後悔しても、純正に戻すのは不可能といっていい。ペイントは二度と復旧できないので、場合によっては外装をもうひと揃え用意し、最悪の場合にはそちらに変更することも考慮しておきたい。
また、失敗を恐れて中古で外装を用意し、そちらをペイントするケースも実際問題として多いようだが、これはあまりお勧めできない。というのも中古はキズや割れなどが理由で格安で入手できることが多いものの、その修復をしっかりできないと仕上がりを大きく損なうこともあり得る。とくに古い純正ステッカーの除去が上手くいかないことが多々あり、そのため表面がデコボコが残った…、なんてことも。
繰り返しになるが、ペイントとは手を抜けば抜くほど途端に、あからさまにトラブルとして浮上する。脱脂が十分でなかったために塗装にウキが出たり、乾燥時間を短縮したがためにタレが出たり、何か無理をしようとすると、仕上がりを大きく損なう結果として返ってくるものだ。なので、一つ一つの作業を丁寧に行なうことを心がけ、ペイントに挑戦していただきたい。